うまく活用したい相続時精算課税制度!2024年に非課税枠が増えたってホント?

相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

通常、贈与をしたらその翌年の2月1日から3月15日の間に贈与税の申告をしなければいけませんが、この制度を選択している場合は特定贈与者が亡くなった時、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。(既に支払った贈与税相当額は相続税から控除します。)

なお、贈与税が一切課されないというわけではありません。相続時精算課税制度には2,500万円の特別控除枠が設けられており、これを超えると一律20%の税率に基づいて贈与税が課されます。

不動産など今後価値が上がることが見込まれる財産を所有している方は、贈与時の時価で財産を評価するこの制度は利用価値が高いのではないでしょうか。

2024年、相続時精算課税制度には大きな変更がありました。今回の記事では変更点について確認していきます。

何が変わったの?

前述した通り相続時精算課税制度は2500万円の特別控除額が設けられているため、暦年贈与(1~12月に贈与された財産価額により算出された贈与税額を翌年申告・納付する基本的な贈与の方式)の基礎控除額110万円はこれまで財産価額から控除することができませんでした。

しかし、2024年から相続時精算課税にも暦年贈与と同じように年間110万円の基礎控除額が創設されたのです。

これにより、相続税の計算の際も相続財産の価額に加算する贈与財産は年間110万円を控除した残額ということになります。

改正前と改正後を比較してみましょう。

【例】

父(65歳)から息子(30歳)に相続時精算課税制度を選択して相続税評価額4,000万円の不動産を贈与した。

改正前(令和5年12月31日までに制度選択)                             (年間贈与額-特別控除額)×20%=贈与税額                       (4,000万円-2,500万円)×20%=300万円

改正後(令和6年1月1日以降に制度選択)                             (年間贈与額-基礎控除額-特別控除額)×20%=贈与税額                       (4,000万円-110万円-2,500万円)×20%=278万円

これまでよりも活用しやすくなった!けど・・・

上で説明した通り、今回の改正により生前贈与を検討している方にとってはより魅力が増したと言えるかもしれません。

[メリット]

(1)2,500万円までの特別控除があること。

相続時において持ち戻し(相続財産への加算)があるものの、その価額は贈与時の価額が適用されます。たとえ相続時に評価額が上がっていたとしても、贈与時の評価額で相続税が計算されます。

(2)制度選択後の2,500万円を超えた贈与財産については一律20%課税で済むこと暦年課税では年600万円を超える贈与については30%以上の税率が適用されますが(一般贈与財産の場合)、相続時精算課税制度を選択していれば、20%の税率が選択されます。

[デメリット]

(1)制度を適用すると、暦年贈与制度に戻れなくなること

相続時精算課税制度は特定の者からの贈与だけが対象となります。暦年贈与制度に戻れなくなるのは、特定の者からの贈与分だけで、その他の者からの贈与は暦年贈与制度の対象となります。

(2)制度を適用した財産には、小規模宅地の特例が使えなくなること

一定の要件を満たした宅地等を相続した場合は、その宅地等の相続税評価額が最大80%減額される特例がありますが、相続時精算課税制度を適用すると、宅地の相続ではなく贈与となるため、贈与時には小規模宅地等の特例は適用できません。(お住いの都道府県にご確認ください)

(3)相続時に比べて、不動産の取得にコストがかかること

相続時精算課税制度を適用して不動産を贈与する場合は、不動産の取得時にかかる登録免許税や不動産取得税が、相続時に比して割高となります。

上記を参考に財産の内容を確認し、家族間でよく相談して、後悔のないプランを立てましょう。

 

出典 国税庁ホームページ   https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103_sankou.htm

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/10/01.htm

*上記記事では復興特別所得税を考慮しておりません。詳しくは管轄の税務署にご確認ください。

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