土地相続で失敗しないための「路線価」って知ってますか?

路線価また上昇!
毎年7月に国税庁が全国の路線価を公表します。
2020年度分についても7月1日発表され、全国平均の路線価は5年連続で上昇という結果でした。
日本全国約32万地点のうち最も高い路線価は、毎年お馴染みの東京都中央区銀座の文具店「鳩居堂」前で1㎡あたりなんと4,592万円!!

4,592万円…ものすごく高いということは分かるけれど、
そもそも路線価ってなんだろう?
上昇すると私たちにどんな影響があるの?

ニュースではよく耳にするワードだけれどよく分からないという人向けに、路線価の基本を解説します。

路線価とは?

路線価とは、路線に面する土地の1㎡あたりの価格のことで、相続税や贈与税を計算するための基準となります。
土地を相続したら相続税、贈与を受けたら贈与税の対象になります。
これらの税額を計算するには、まずその土地の価値がいくらになるのか算定(=評価)する必要があります。
土地の価値といえば、売買が成立する価格“時価”なのだから、時価が相続税や贈与税の計算の基礎になりそうですよね。
しかし、時価は評価する人によって高くなったり低くなったり差が生まれてしまいます。
そこで公平性や合理性の観点から、土地の評価には基本的に路線価が使われているのです。

例えば、10万円の価格が付けられた路線に接する土地165㎡(約50坪)の評価は次のとおりとなります。

10万円×165㎡=1,650万円

なんて簡単な計算!
しかし実際の土地の評価は複雑です。
土地の形や位置している場所の良し悪しなどによって、土地の評価に調整を加えなければいけないからです。
より正確な評価額を求めるとなると専門家への依頼するのがよいでしょう。

路線価が上昇すると

路線価が上昇すると、土地の評価額が高くなります。
そして土地の評価額が高くなると相続税や贈与税が高くなります
ちなみに、土地を所有していれば支払わなければならないのが固定資産税。固定資産税の計算には固定資産税評価額という路線価とは別の評価方法が使われています。

当事務所が所在している宮城県も路線価が8年連続で上昇しています。
宮城県の中でも上昇の大きかった仙台市太白区にある長町駅周辺の路線価をピックアップしました。

<平成26年 路線価>

<令和2年 路線価>

黄色いマーカーをした長町駅前の路線価は平成26年度では1㎡あたり12万5千円でした。
それが令和2年度には1㎡あたり23万円にまで上昇しています。
この地区は商業施設や高層マンションが建設されたこの地区は、7年で2倍近く路線価が上がりました。
例えば、長町駅前のこの土地を165㎡(約50坪)所有していたとして子に贈与した場合、平成26年に贈与した場合と令和2年に贈与した場合にはどのくらい税額がかわるのかみてみましょう。

①平成26年中の贈与
評価額:12万5千円×165㎡≒2,062万円
贈与税:(2,062万円-110万円)×45%-265万円≒613万円

②令和2年中の贈与
評価額:23万円×165㎡=3,795万円
贈与税:(3,795万円-110万円)×50%-415万円≒1,427万円

※不整形地などその他の調整はしない簡便的なものです。
※贈与税の計算は親が子に贈与した場合の特別税率を使用しています。

同じ土地ですが、贈与するタイミングによってこんなにも税額が変わってしまうのです。

路線価の調べ方

土地を所有している人はもちろん、これから購入予定の人、将来親の代から土地を受け継ぐ予定の人、さらには借りている土地に建物を建てていて借地権を有する人など、路線価は多くの人にかかわるものです。
所有する土地の路線価を一度確認してみることは、税金への備えの大切な一歩といえるでしょう。

全国の路線価は国税庁ホームページの路線価図・評価倍率表から確認することができます。
都道府県選択→路線価図→市町村という順番で選択していくと、該当する土地の路線価を検索することができます。
自分の土地の路線価を見つけることができたら、路線価と土地の㎡数を掛けてみましょう。
上記に記載したとおり、土地の詳細な評価は複雑です。
しかしこの方法によって、所有する土地の評価額をざっくりと把握することができます。
※路線価図には路線価が千円単位で記載されています。125と書かれている場合は125,000円となります。
郊外などで路線価を検索しても出てこないという地域があります。
このような地域の土地は、倍率方式という別の方法で土地の評価額を算定することになります。
倍率方式の場合には国税庁ホームページの路線価図・評価倍率表から都道府県選択→倍率表から該当の住所を探し、1.1などと書かれた倍率を確認します。

倍率方式の計算方法は次のとおりです。
固定資産税評価額×倍率=評価額
固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税課税明細書に記載されています。

コロナ影響

7月に発表される路線価はその年の1月1日時点のものです。
したがって新型コロナウイルスの影響は考慮されていません。コロナの影響で訪日外国人はほぼゼロに。不動産売買の数も減少し、地価は下落する一方となりました。
そんな中、国税庁は路線価の減額修正する措置の導入を検討しています。(2020年7月現在)
このような減額措置は阪神淡路大震災、東日本大震災、直近では令和元年台風19号で導入されました。
路線価の減額措置導入の有無は、国土交通省が9月に基準地価を公表したあとに決定される見込みなので、ぜひ注目してみてください。

まとめ

今回は路線価の基本について確認しました。
上記の長町駅周辺の例でも見たように、都市開発の影響などにより短期間の間に路線価が大幅に上昇することもあり得ます。
将来の相続や贈与に備えて、まずは自分の所有する土地がどのくらいの評価額になるのか概算で把握するのがおすすめです。

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